kunji5522’s diary

原田君事の俳優になったきっかけから俳優業18年の思い出

名匠 三隅研次監督との出会い(3)

f:id:kunji5522:20180303213156j:plain

正直この頃は私が軽口を叩いていた三隅研次という監督さんが全盛期の大映時代劇を支えてきた名匠だという認識はまったくありませんでした。当時の私は酒を飲みに行くのに忙しくて映画やテレビはあまり観ていませんでした。年齢を重ねた今の私は、DVDや時代劇専門チャンネル三隅研次監督作品を観ているので凄い監督さんと付き合ってたんだなぁという思いはありますが。おべっかいを使ったり計算づくで近づいたりするような嫌らしさが私にあれば三隅監督はきっと受け入れてはくれなかったと思います。変わり者としても有名だった三隅監督が単細胞で出たとこ勝負で怖いものなしの私に目をかけてくださったのはストレ-トに懐へ飛び込んでくる私のような人間が珍しかったことと、変わり者同士お互いに気が合ったからだと思っています。もちろんその根本には手を差し伸べたくなるくらい私がダメだったからということがあるんでしょう。三隅監督は私が演じる過激派の薩摩藩士の役を膨らませてくださいました。寺田屋事件の斬り合い後、投降を呼びかける奈良原喜八郎に説得されて2階から丹波さん扮する田中河内介に藩主久光公に釈明するため薩摩へ行ってもらおうとします。2階から階段をかけ降りるカットの撮影本番前のテストで、セットの階段が急傾斜なので滑って尻餅をついた私に時代劇を撮り慣れてる監督は足袋の裏を水で濡らすと滑らないことを教えてくださいました。放送された『天皇の世紀』第九話「急流」は私の顔のアップが思った以上に多くて嬉しくなり高額でしたがDVDのボックスセットまで購入して持っています。